だから今、心底ホッとしている。蓮に抱きしめられている、この状況に心底ホッとしている。



蓮の手のひらが、あたしの頬に触れる。いつも冷たい手のひらが熱くて、すごく心配してきてくれたんだな、と思った。



「蓮……来てくれて、ありがとう」



私がそう言うと、蓮はあたしの唇に蓮のそれを押し当てた。

優しく触れる唇は少し震えていて、まるであたしの存在を確かめるかのように何度も何度も触れては離れた。

とても悲しいキスな気がして、あたしは大丈夫だよ、と言うように蓮の首に腕を回した。



それからしばらくして離れると、あたしたちはそこから立ち去った。





あたしたちが捕まっていたのは、隣町にある廃ビルだった。

そこから出てすぐに、タカの家の病院に連れて行かれた。



外傷は特になかったけど、一応診察してもらって帰った。

少し気持ち悪かったけど、原因は首の後ろを叩かれて意識を失ったことだった。