俺を下から睨む目は上目遣いで、


あの頃とは違う、ライトブラウンの髪が揺れる。


胸も一回り大きくなっていて。




俺も菜穂も、知らない人になっていた。








菜穂の両手を片手で掴んで、頭の上で固定する。




「大河…っ?」




困惑したような声も、関係ない。


そのまま菜穂を見下ろして、開いている片手で菜穂の体を撫でる。




ピクリと反応する体は変わらない。


甘く歪む表情も変わらない。


俺の名前を呼ぶ声も変わらない。




でも、




「やめてよ…」




泣きそうな声で俺を拒否する菜穂を俺は知らない。




「もう終わったでしょ……?」




終わった、全て。


二年前のあの日に。




「じゃあ、なんでっ」


何で今更、俺の前に現れんだよ――…




吐き出した言葉は、止まらない。




「分かってたんだろ?こうなるってこと。確かに俺は、菜穂がここに来ることを了承した。けどなぁ――」




菜穂の瞳は、困惑に揺れる。




「こうなるって分かってて、そうした」




俺も菜穂も、わかってたはずだ。


俺達はもう、あの頃とは違う。


あれほど純粋にもなれないし、大人にもなれない。




だけど、


心が、あの頃に引き戻される。


体が、菜穂の温もりを覚えてる。





二年前、俺と菜穂が付き合っていた頃を、俺は忘れてなんかいねぇ。