埃臭い。身体が軋むように痛い。なんだか、体を触られているような感覚がする。



「ゔっ……」



誰かに掴まれた左腕が痛い。

重い瞼を持ち上げれば、紺の長髪が見えた。

少し霞んでるが、見えないことはない。



「てめぇ……スイ、か?」

「目が覚めたんですね。今、応急手当てをしているので。痛むかもしれませんが、我慢してくださいね」



紺色の髪を一括りに結んだシルバーフレームの眼鏡の男――スイは、俺の問いに応えることなく、俺の左腕に触れる。

周りを見渡せば、少し埃っぽい、古びた建物の中にいるようだった。

俺は大きな柱に良しかかるように座らされ、手は拘束されていないが足が縛られている。

こんなことしなくても、痛すぎて体なんか動かねえっての。

視界だけは少しずつクリアになってきて、スイの顔がよく見えた。眼鏡の奥の瞳は、海のように青かった。



「ここ、どこだよ」

「Phantomの拠点です。廃ビルの中ですよ」

「ふーん」



意外にもすんなりと教えてくれた。

この情報を誰かに伝えることは動けない今の俺では不可能だからだろうか。