だから気づいた。

夜の繁華街で遊んだり獅龍に入ったりしたことを怒ったのは、俺を心配してくれていただけなんだって。

それに気づいてからは、あまり反抗的な態度を取らなくなった。

できる限り毎日家に帰り、たまに親父と出かけたりするようになった。



それから数年、ここまで親父との関係が良くなったのは、仲間と親父本人のおかげだ。

仲間が、親父が支えてくれたから、生きてこれたんだ。

でも、その大切な親父が今、血を流している。まるで、あの日みたいに。

目の前が赤く染まった、あの日に――。



「親父っやだ!死なないで!」

「隼、落ち着け。大丈夫だ。このくらいじゃ死なない」



親父が俺の頬を掴んで引っ張る。



「いひゃい……」



血のついた手が、離れていく。

その手が与えてくれた痛みで、少し冷静になれた。



「お前が何をすべきか、わかるか?」

「蓮たちと合流して、応戦する……真梨を守る」



狙われているのは真梨だ。真梨を守り抜けば勝ちだ。単純で、明快な結論。



「それなら、お前は今ここにいるべきじゃないな」

「うん」



蓮のところに……真梨のところに行かなくちゃ。



「行ってくる!!」

「ああ、行ってこい」

「親父はちゃんと病院行けよ!!」



親父に背を向けて、学校の玄関に向かって走る。

後ろから「おう」と親父の声が聞こえた。