俺を庇うように飛び込んだ親父の背中にブスリと、ナイフが刺さっていた。

真っ赤に染まる視界、鉄のような嫌な匂い。



「お……じ……?」



久しぶりに出した声は掠れていて、うまく音にならなかった。



「隼……ごめん……」

「……な……が…………」

「気づいてあげられなくて……ごめんな……」



ぎゅっと、親父が抱きしめてくれる。

何年ぶりの、温もりだろう。ずっと、これが欲しかったんだ。誰かに、抱きしめてもらいたかった。



「アハ……アハハハハハハハハ!!!!」



女の笑い声が響く部屋で、俺は幸せを感じていた。



「隼、愛してる……」

「お……」



俺もだよ、親父……。

言いたい言葉は、声にならない。

親父の胸に、顔を埋める。

あぁ、まだこうしていたい。親父と一緒にいたい。死にたくない。死んでほしくない。親父と一緒に、生きていきたい。



――ブォンブォンブォン



バイクの音がする。

この音は……蓮のバイクだ。

ああ、蓮が来てくれたんだ。蓮なら、なんとかしてくれる。

そう思うと、安心して体の力が抜けた。そっと目を閉じる。

次に気がついた時、俺は病院のベッドの上だった。