毎日殴られて、無気力だった。学校に行くこともできない俺は食事を取ることもできず、痛みでまともに動けなかった。

何も感じない人形みたいだった。腹が減ったと言う感覚すらなくて、無気力な日々がどれほど続いただろうか。





俺があの女に捕まってから何日かたった頃、親父を様子を見に来た。俺が戻ったと連絡を受けたのだろう。

しかし親父が思い描いた様子とは全く違ったものだった。親父はあの惨状に、あんなに絶望を感じたのは後にも先にもあの時だけだ、と言っていた。

ガリガリに痩せて抵抗もできない息子、半狂乱で息子を殴る妻。地獄絵図だったと思う。

親父に気づいた女はパニックになり、殴るのをやめると俺から離れ、机の上にあったカッターを手に取った。



「よ、良幸さん……あなたが、悪いのよ……私より、こいつを愛するから……」

「おい、やめろ! 離せ!」



親父の顔は必死なように見えた。

母さんは持っていたカッターを床に蹲る俺に向けた。

その距離、約2メートル。女が勢いよく俺に向かってくる。

あぁ、死ぬんだな……。

そう思った。けれど、刺されたのは俺ではなく……親父だった。