目の前には、ビニールシートやパラソルをたてている大変そうに動き回っている下の面子。
だけれどあたし達がそう言うことをすれば示しがつかないわけで、見守るしかない。
その中で大河がなぜかいないことに気付いて、あたしは口を開いた。
「大河どこ行ったの?」
「あー…トイレらしい」
極力目を合わせないようにそう言うタカ。
まだパーカーを脱いでいないのだから大丈夫かとも思ったが、これでも少し刺激が強いらしい。
しかも、菜穂の方は一切見ない。
見たらどうなるのか、本人が一番わかっているのだろうから何も言わないけど。
「ふーん」
ポツリと呟いて、遠くを見る。
そこには、こっちに歩いて来ている一人の男がいて。
少し日に焼けた上半身裸のそれが、顔を上げた瞬間。
目を見開いて、少し顔を赤く染めた気がした。
「あ、大河」
誰かがそう、声を漏らす。
だけど、あたしは何も言えなかった。
こっちに歩いて来た大河が、なぜか緊迫した雰囲気を纏っている気がしたから。
「おい」
辿り着いた大河から、低い声が発せられる。
誰に投げられたかもわからないその声に、誰も口を開かない。
ただ、あたしと隣にいた菜穂に近付いて来た大河は、あたしの頭に手を置いて、菜穂とあたしの間に入り込んだ。