「ちょっと、メイクとかいいんだけど」
「黙りな」
涼子に顎を掴まれ、涼子の方を見るしかなくなる。
涼子と目が合えば、涼子はチークで染めた頬をさらに染めた。
「何で顔赤くなってるの?」
「ば、赤くなってないし!!」
頬を赤く染めたまま「ちょっと黙れ」と言われて、ムッとしながらも大人しくする。
気を取り直したらしい涼子は、メイク道具を漁り始める。
「今すっぴん?」
「うん。なんもしてない」
「それでこれ? まじムカつくわー」
ぶつぶつ言いながらも涼子はピンク色のパッケージのクリームを手に取る。
「それ何?」
「コントロールベース。あんた、顔も肌も綺麗だけど、血色感なくて人形みたいだから」
「それ塗ったら血色感出るの?」
「そう」
ふーん、と言っている間に塗られる薄いピンクのクリーム。
目の前に置かれた鏡を見れば、少し顔色が良くなった気がする。



