「あ、ああ……。すまない。また、会いたいんだが……」
「…………」
おじさんの声に、誰も答えない。
「……気が向いたら、これに来てくれないか」
「個展……ですか」
タカが答える。
「うん。この秋からしばらく、個展を開くことになったんだ。僕もここにいるから……」
「わかりました」
何がわかったの?全然わかんないよ!
「行かない……」
掠れたような声が出た。
「行かないから!!!!」
こんな風に叫んだのは、久しぶりだった。
正直、訳がわからなかった。
いったい、この人が何を考えているのか、あたしがどんな状態なのか、もう必死で、本当に何が起こっているのかわからなかった。
気づけばあたしは、蓮に連れられてホテルを出て車に揺られていた。
「…………」
誰も離さない車内は、とても静かだった。
タカも蓮もあたしも、何も話さなかった。
しばらくして、倉庫の前に車が止まる。



