「ヘンリック・カイヴァント……画家……」
名刺に書かれた情報を読み上げる。
他には連絡先なんかも書いてあって、ごく一般的な名刺だ。
「ヘンリック・カイヴァント……俺の叔父が好んで贔屓にしてるって……」
「ああ。今日はその関係でパーティーに参加したんだ」
どうやら、タカの家関係の人らしい。
「本当に、すまなかった。申し訳ないのだが、名前を教えてくれないだろうか……」
おじさんの、薄い水色の瞳があたしを射抜く。
あたしの名を聞いているのは、明白だった。
答えたくはなかった。けれど、おじさんの意思がこもったような強い視線を受けたあたしの口は、勝手に開いていた。
「ま、り……真梨、です……」
あたしがそう言った瞬間、おじさんの目の色が変わったような気がした。
「やっぱり……」
やっぱり?やっぱりって、何……。
おじさんを、じっと見つめる。



