「蓮……」
「大丈夫か?」
振り返った蓮の優しい表情と声にホッとする。
小さく頷くと、蓮の腕を両手でキュッと掴んで、おじさんに向き合った。
「す、すまない……知り合いに似ていて、取り乱してしまった」
「いえ……少し、目立ってしまいましたね。外に出ましょうか」
蓮の隣にいたタカが、おじさんにそう言って外へ促す。
周りに人だかりができていて、ざわついている。
必死で気づいていなかったけれど、少し騒ぎになってしまったみたい。
会場を出て人気のない場所へ行くと、あたしと蓮、タカ、おじさんの4人だけになった。
「ここでいいか」
蓮のその声で、おじさんに向き合う。
そこで初めて、あたしはおじさんの姿をちゃんと視界に入れた。
「本当に、すまなかった。怪しい者ではない。これを……」
彫りの深い顔に、金髪。どう見てもおじさんは外国人だ。
日本人に比べて老け顔な外国人であることを差し引いても、50代に見える。
おじさんがあたしたち一人一人に名刺を配る。
その時に見えた瞳は、薄い水色だった。



