「ちょっと、お手洗い行ってくるね」
「おー」
そんな会話をして、蓮とタカの元を離れる。
会場外にあるお手洗いに入って、用を足す。
手を洗って、軽くメイクを直してからお手洗いを出た。
会場に戻って、蓮たちの元へ向かう。
その時だった。
――バシッ。
急に誰かに腕を掴まれて、振り返る。
「リリー?!」
あたしをそう呼んだのは、どこからどう見ても外国人のおじさん。
おじさんの手があたしの腕から離れると、今度は両手で両肩を掴まれた。
「リリー……」
「い、いたっ」
人の、名前だろうか。
『リリー』と呼んで肩を掴む手に力がこもっていて、痛い。
「やめてください……誰ですか!」
あたしの声に、おじさんの手が緩む。
その時、あたしとおじさんの間に入り込むように、誰かが割り込んできた。
紺色のスーツが視界に広がる。



