うざそうに舌打ちして、蓮は声を張り上げた。
「隼!!」
「はい、なーに、蓮!」
「つぶせ、あいつ」
「はいはーい!」
なにやら物騒な会話が行われ、隼はスピードを落としていく。
あたしはその隼を追うように、蓮にしがみついたまま、顔だけ後ろへ向けた。
二台のバイクのうち、先に走っているバイクに、隼のバイクはどんどん近づいていく。
そのまま真横につけると、並走した。
言葉を交わしているのか、しばらく並走していた――そのとき、事は起こった。
――ガンッ。
事もあろう事か、隼がナンパ男のバイクを、並走したまま蹴り上げたのだ。
「え、ちょっと、隼!? 流石にヤバくない?!」
「ほっとけ」
あたしの独り言のような慌てた声に、蓮が冷たく言う。
蹴られた男は少しバランスを崩し、立て直すのにスピードが落ちる。
「う゛あっ、何すんだテメェ!!!!」
大きな怒鳴り声が、小さく聞こえる。
あの飄々としたナンパ男の声とは思えないような、ドスのきいた声だった。



