ライトに照らされる顔は、遠目にも整っているように見える。
けれど、記憶には全く残っていない。
「…………」
あたしの名前は割と有名だし、会ったことない人なんじゃないか……、という考えすら浮かぶ。
会ったことないのに『忘れちゃったの?』とか言うイタい人なのかも……。
あたしの思考回路が良からぬ方法に向かっていることに気づいたのか、銀髪の彼は慌てたように口を開いた。
「ちょ、俺だよ~、俺! キョウ! ○×市のショッピングビルであったじゃん~」
オレオレ詐欺かと思ったけど、違うみたいだ。
○×市のショッピングビルと言えば、この間パーティードレスを買いに行った……。
「あ」
……思い出した。
「面倒くさいナンパ男二人組」
銀髪の、「俺と付き合わない?」とか言ってた意味のわからない面倒くさい男。
ということは、隣でまだヘルメットを被っているのは、あのときいたもう一人? どんな顔かはもう忘れたけど。



