贅沢だろうか。

叶うなら……あの人たちの、父さんと母さんの本当の息子として生まれたかった、なんて。

最低、だろうか。



「もう会うことはないと思うけど……」



陽子さんが膝から泣き崩れる。

歩さんの手が寄り添うように陽子さんの肩を擦る。



「さようなら」



それを横目に、俺は個室を出て行く。

出されたコーヒーを、一口も飲むことなく。



【颯side end】