一瞬にして空気が凍り付いた。
だけど俺は、あんたたちと仲良しこよしするつもりなんて毛頭ない。
無難に過ごして終わらせよう、そんな気持ちがなかったわけじゃないけど、やっぱり馬鹿らしい。
だってこの人たちは本当に自分勝手だ。
会ってからより一層そう思った。
息子だと思ってる? 会いたかった?
そう思ってるのはあんたらだけだよ。
俺は親だなんて思ってもいない。会いたくもなかった。
「それは……捨てたつもりはなくて……」
「俺は理由を聞いているんです。言い訳を聞いているわけじゃない」
おろおろと、陽子さんの瞳が揺れる。
歩さんもどうしたものかと顔を強張らせている。
他人としては、この人たちは別に悪い人ではないと思う。
少し感情が顔に出やすく素直な女の人と、正義感と責任感が強い男の人なんだと思う。
でも俺にとっては最悪だった。俺の気持ちなんて、今の俺の立場なんて考えてくれてもいない最悪の人たちだ。
「……私は、風俗嬢だったの」
陽子さんが気まずそうに少しずつ話し出す。



