蓮に丸め込まれるように、赤のドレスを持って試着室に入る。
試着して出れば、おぉ、とお姉さんと菜穂が声を上げた。
「今までで一番似合ってる!!」
「とってもお似合いです~! さすが彼氏さんの見立てですね!!」
色が違うだけでこれだけ違うのかと、驚いた。
シンプルすぎると思ったドレスが、鮮やかな赤色になっただけでパァッと明るくなる。
白い肌を、真紅がより明るく見せてくれる。
「すごい、綺麗……」
艶やかな赤が、とても綺麗に瞳に映る。
「決まりだな」
満足そうに、蓮が笑っている。
「でも……目立つ、よね」
大病院主催の創立記念パーティー。
あたしの知らない、見たこともない未知の世界。
不安なんだ。
下手に目立ちたくない。変なところを見せたくない。
あたしは礼儀作法なんて知らない。教えてもらったことなんてない。
まともに育てられたことのないあたしが、まともに人と関わってこなかったあたしが、そんなところに行ったら場違いに決まっている。
だから、目立ちたくない。できるだけ、静かに、無難にこなしたい。



