「うん。だから一発ぶん殴ってこようかと思ってたんだけど、走りの日と被ってるんだよねー」
何でもないように、颯が言う。
「ふーん。何時?」
スマホを置いた大河が言った。
「夜7時。微妙じゃない?」
「あー、そうだなー」
そう言って、困ったように大河は頭をかく。
「8時予定だったの、9時からにするか?」
「蓮、いいの?」
「あぁ。大掛かりなものでもないしな。それより遅くなりそうなら、途中から合流しろ」
「そうする。ありがと」
颯と蓮で話を終わらせる。
それはいいんだけど……。
「走りって、何?」
さっきから話の中心になっているそれ。
何の話か全く分からない。
「ああ、真梨に言ってなかったか」
今初めて気づいたとでも言うような蓮。
「初耳なんですけど」
「悪い悪い。夏休みの最後の日に、数人で走るんだよ。バイクで。よく言やツーリング?」
「ふーん……」