「蓮くんはうちの常連さんだし、水川さんはどうしてるかずっと気になってたからね。様子を見てみたくて」



確かに、蓮……というか、獅龍のメンバーが怪我をした時は専らうちの病院に世話になっている。ある意味常連だろう。

真梨のことは病院に連れて行ってからずっと親父は気にしていて、ちょくちょくメールで尋ねてきていた。

面倒くさくて全部無視してたけど。



「わかった、言っておく」

「頼むな」

「じゃあ、行くな」



みんなに背を向けて、玄関扉を開ける。

振り向くと、泣きそうなユウ。複雑そうなナオ。

美樹がいたら、泣いてくれたかな。



「またすぐ帰ってくるって」



開けた扉から外に出て、笑いながら、言う。



「行ってくるな」



すぐに会えるから。

もう、いつでも帰ってくるから。

そんな顔、しないでくれ。



「「「いってらっしゃい」」」



ユウとナオと、由美さんの声だった。

三人とも、手を振っていた。

親父は無言で、手だけ振っていた。

俺も、振り返した。

扉が閉じるまで、ずっとずっと、振り続けた。



【鷹樹side end】