「じゃあ、そろそろ帰るよ」



それを皮切りに、荷物だけ確認して玄関へ向かう。



「今日くらい泊まってけば良いのに」



唇を突き出して、拗ねたようにユウが言う。

黙っているナオも同じことを思ってるみたいだ。



「俺は幸せ者だからさ。他にも心配してくれる奴らがいるんだ」



さっきから、ポケットに入れているスマホが震えている。

大方、大河か颯か隼あたりだろう。

例年より帰りが遅いから心配してくれてるんだと思う。



「また近いうちに来るから」



ユウ、ナオ、親父、由美さんの順に目を見て言う。

美樹はもう寝てしまった。



「うん。待ってるね」



由美さんが笑顔で言う。

さあ出よう、と思ったとき、親父が口を開いた。



「ああ、そうだ。来月、うちの病院の創立記念パーティーがあるんだ。鷹樹にも出席してほしいんだが……ぜひ、蓮くんや水川さんも誘ってほしい」

「え?」



うちの病院の創立記念パーティー。

5年ごとに行っているそれは、今年で確か40周年だ。