俺は、郷田家の長男として生まれた。

郷田家は県内有数の総合病院の一つを代々経営していて、親父は数年前から院長を務めている。

俺が生まれる前はまだ院内の医者の一人で、同じく医者の一人だった母さんと結婚した。

しばらくして俺が生まれて、その4年後には次男の直樹、そのまた2年後には三男の悠樹が生まれた。



その頃は幸せだった。

長男として、弟たちの手前我慢しなければいけないことも多かったけど、母さんがいて、親父がいて。直樹――ナオは少しずつ言葉を覚えだして、悠樹――ユウの小さな手が俺の指を握る度に、笑みが溢れた。

とても、幸せだった。



だけどその幸せは、長くは続かなかった。

その3年後、母さんが死んだ。俺は9歳、ナオは5歳、ユウはまだ3歳だった。

医者の不養生とはよく言ったもので、母さんは病気だったらしい。

気づいたときには、もう全てが遅かった。