「ん……」



温かいぬくもりが、体を包んで離さない。

眠りから覚めきらない重いまぶたをゆっくりと開ければ、そこに広がったのは見慣れない景色。

蓮と泊まっている部屋の布団の中から見える景色は、まだ慣れない。

蓮に後ろから抱きしめられ、蓮の腕がお腹に回っている。



ぐっすり寝ている蓮の腕の中からそっと抜けだし、時間を確認すると10時だった。

昨日、あれから蓮たちの昔話を聞いたりしながら、だいぶ遅くまで騒いでいた。

そのことを考えれば、決して遅くはない起床だ。

今日は昼過ぎにここを発つと聞いているから、あと1時間もすればみんな起きてくるだろう。

それまでどうしようか……。

そう思いながら部屋を出れば、外はしとしとと雨が降っていた。

昨日からずっと降っているのだろうか、帰るときまでには止んでくれると良いけど……。



雨に濡れる中庭を眺めながら、屋根のある縁側を歩く。

昨日も朝に中庭を散歩していたな、そんなことを思いながら適当に歩いていたら、いつの間にか奥の方まで来てしまっていたらしく、見たことのない景色が広がった。