颯の家族に興味なんてない。あたしは自分のことで精一杯だ。

だけど、だけど……そう思ってしまうくらい、ここは居心地が良い。

あたしがここで育っていたら、どんなだっただろう。颯のお母さんを見て、怖いなんて思わないだろう。多分、もう少し、まっすぐ生きていけたんじゃないだろうか。

そう思ってしまった自分に、少し驚いた。あたし、自分が思ってたよりお節介みたいだ。



「すみません、偉そうに……でも、きっと颯は怒ってなんかないです……」



消えた勢いと共に、視線が下がる。



「……ええ、そうね……ありがとう、真梨ちゃん」



颯のお母さんの顔は見えないけれど、柔らかく微笑んでいるんだろうことは安易に想像できた。