「あ、真梨ちゃん。大丈夫だった?」
真っ先に颯が声をかけてくる。
「うん、大丈夫だったよ。怪我もないし」
「それならよかった」
「真梨も散々だな、あいつらの遊びに付き合わされてよ」
まるで人ごとのように笑いながら話している大河。
まあ、大河にとっては人ごとなんだけど。
「ほんとにね」
笑いながら答える。
「それでさ、颯。これなんだけど……」
颯の方に、タオルにくるまれた塊を差し出す。
颯は納得したかのように頷いた。
「ああ、服だね。濡れちゃってるし、洗濯して乾かしちゃった方が良いよね」
「そうなの。お願いできる?」
「もちろん。ちょっと待ってね、今案内するよ」
颯は手にしていたボールを拭き終えると、「大河、後はよろしくね」と大河に任せてこちらに近づいてくる。
大河も「おう」と返事をして、泡だらけの手で洗い場を出て行くあたしたちに手を振った。
洗い場から少し離れたところに、『関係者以外立ち入り禁止』と書かれたドアがある。
颯はその前で立ち止まると、戸惑いもなくその扉を開いた。
「入って」
颯の声に導かれて、中に入る。
中はロッカールームのようになっていて、従業員が使う部屋みたいだ。
入ってきたドア以外にも扉が2つあって、颯はそのうちの一つをポケットから取り出した鍵で開けた。



