「菜穂…?」




様子を伺うように発した声に、菜穂は何も言わなくて。


きっと、電話越しで複雑そうに微笑んでいるに違いない。











「じゃあ、7月30日の朝9時に獅龍の倉庫で」




菜穂の了承の声をきいて、電話を切る。


経った時間は約1時間。


女子としては比較的普通なちょっとした長電話、と言うくらいだが、男子としてはそうもいかないらしい。


あのまま色んなことを電話越しに話していたあたしに、蓮以外は呆れたような視線を送ってくる。




蓮はと言えば、眠かったのかあたしの肩に頭を預けて寝てしまっている。


それを起こすのも勿体なくて、あたしはそのまま体を動かさない。




「……蓮、グッスリだね」


「うん、最近寝れてないみたいだから」




話を振ってきた颯にそう答えれば、そこにいる全員が目を見張る。


当たり前だ。


これを告げたのは初めてなんだから。




「どう言うことだよ」




大河の眉間に、深い皺が刻まれる。


一緒に寝てるのがあたしだから、あたしに疑問が集まるのは必然。


蓮が寝ていない、と言っただけでここまで心配しているのが行動に見えてしまうのだから、本当に仲間意識が高い。




「言った通り。寝てないの」




そう紡げば、意味がわからないと言う様にみんな首を傾げた。