「はぁ〜。」
父は、ため息をついた。


「どうしたの、パパ?何かあったの?」

心配そうに母が訪ねると、父はソファーに座り込んで頭を抱えて答えた。


「いや、お得意さんに頼まれてた品物が明日までなんだけど、工場の機械が故障しちゃって明日までに間に合わなくなってしまったんだよ。」

「まぁ、大変!」



カナルの父は、おもちゃ会社に勤めていた。母は、心配そうに父を見つめた。


(どうかしたんでちゅか?ママさんの顔が悲しそうでちゅ。僕がママさんを守ってあげなくっちゃ!)

カナルは、母の顔を手のひらで撫でた。母は、カナルの顔を見て言った。


「カナルも心配してくれるのね。優しい子ね、ありがとう。パパが困ってるみたいなの。でも、きっとなんとかなるわ。」


父もカナルを見て言った。
「あぁ、そうだ。カナルは心配しなくてもいいぞ。なんとかなるから」







その時!

「な・ん・と・か・な・る」













「…えっ?!」
二人は、声を揃えて驚いた。
紛れもなく、生まれてまだ1週間しかたたなないカナルが喋ったのだ。


父は、驚きすぎてソファーからずり落ちて、そのまま這いつくばりながら、カナルに駆け寄った。

「今カナルが喋ったよな?!」


父は、母の顔を見て言った。母も驚きすぎて声が出せないまま大きく頷いた。



二人は、カナルの顔をマジマジと見つめた。

「カナル、パパだぞ!パ・パ!言ってごらん。この子は、天才かもしれないぞ、ママ。」







「…アゥ。」
(あれ?僕、今しゃべれたでちゅか?でも、もうお話できないでちゅね。なんででちょ?)


「あれ?やっぱり気のせいだったのか?」


不思議そうに二人は、カナルの顔を見つめた。



トゥルル…トゥルル…。
「はい、えっ本当に?わかりました。はい、失礼します。」
父は、呆然となりハッとカナルを見た。

「もしかししたら、カナルは凄い力を持ってるんじゃないか?!」


父の言葉に何がなんだかわからない母は、きょとんとしていた。