その夜。


「でも、よかったよな。大したことなくて。」

父は、ジジが軽傷だったと母から聞いていた。
本当のことは、言わなかった。病院の先生の話でも信じられないと言っていた。
なぜかと言うと、ジジの内臓の損傷がキレイに治っていたからだ、そんなことは絶対にあり得ないことだった。


「所でジジとカナルは、もう寝たのか?」

今日は、カナルが寝てから父は仕事から帰宅していた。

「えぇ。パパが帰る少し前に寝たわ。疲れたんでしょ。…、」

母は、考え事をしながら遠くを見つめた。

「ママ?、ママ?」

「えっ、何?」

「どうしたの?ボーっとしてたよ。考え事?」

「ううん、私も疲れただけよ。」

母は、思うことがあったが父には言わなかった。

「ちょっと、カナルの様子を見てくるわね。」

母は、寝室に向かった。


カチャ。
静かにドアを開けた。

母は、カナルの寝顔を見つめて、小声で言った。

「…気のせいなのかしら。」
そう言ってカナルの頭を撫でてから、部屋を静かに出ていった。




(…ジジ、起きてまちゅか?)

(うむっ。)ジジは、少し照れくさかった。

なぜかと言うとカナルに大好きと言われたからである。

(ジジ、体はもう大丈夫でちゅか?)

ジジは、ハッとなった。
(そうじゃ!お前さん、人間の前で無闇に力を使うでないわい!)

カナルは、プーッと膨れた顔をした。
(だって、あの時はどうしてもジジを助けたかったんでちゅもん。それに知らないでちゅよ、力使ったなんて。)

(う〜む、無意識に感情で出した力かぁ〜、困ったもんじゃわい。やはり、わしがそばにいないとダメじゃの。)

なぜかジジは、嬉しそうに言った。

(でも、なんでジジはいっぱいケガをしたんでちゅか?)

ジジは、車に乗った二人組の話と自分の不注意で事故にあったことを話した。



(…。)

(カナル?………!違うぞ、もとはといえば、わしの不注意からの…これっ!話を聞かんか!)

カナルは、怒りに震え瞳が燃えるように赤く染まり、フッとジジの目の前から消えた。