何かが侵入したのを感じ、アイスブルーの瞳が見開かれた。





玉座から立ち上がる。





「グラス…。虫が入り込んだ。」





「まさか…。」




お辞儀をし、立ち上がる。




「いや、待て…。これは面白い。」





漆黒の瞳が、赤々と燃え上がるのが見えた。





「これは好都合だ。」





笑いが止まらない。
邪魔が入らぬうちに完成させてしまおう。





結界が緩み、虫が入った原因は自分であることを知りつつ。





「さぁ…。舞台は出来た。」





*******




息がかかる首筋がゾクゾクとしている。
もう私は…このバンパイアから離れることは出来ない。





吸い込まれそうな漆黒の瞳が見開かれた。





何処か遠くを見ていた。




ノアは近くて遠い。





「ここにいろ。外に出るな。」





反論しようとした瞬間…。炎と共に消えていく。




「また…。おいてきぼり。」





城の中に戻る。一人は寂しい。
隠した小さな十字架を握りしめる。





「ジーナ…。」
祈りを捧げる亡き家族に…。





不意に気配がした。






振り返ると





「グラス…。びっくりした。どうしたの?ノックもなかったからわかんなかった。」





とっさに十字架を握りしめて隠した。





様子がおかしい。





「グラス?」





顔をあげると
「人間が入り込んだようです…。」





「それって…。」





頭に浮かんだのは





「教会の人間?」





こくりとイエスの表示をする。





「きっと私が来たから…。」





吸血鬼は狩られる。もちろんこの闇の世界を排除しに…。





「だから…。貴女を隠します。王の元に…。」





「王様の?」





グラスから冷気が広がり部屋は白い空気に包まれる。





青白い光が床に走り、マリーを包んでいく。





パキパキパキ…。





音をたてながら氷の花びらが出来上がり、ふわりと浮かんだマリーを中心に包んでいく。





瞼が重い…。寒い…。





「グラス…。」





「ごめんなさい…。マリー。」





冷気が強くなり、最後の花びらが閉じられる…。