大抵人間に私たちは暗示を掛ける。

初めに誘惑し、口付けを交わし酔わせる。

そして酔いから目覚めぬように暗示を掛ける。

だけど、この男、いいえ蘭はかかっていない。

何故?

「なんであんた暗示に掛かってないの?」

「暗示って?」

きょとんとした顔でこちらをみつめてくる。

その瞳はまさに無垢。

ああ、この男はまさに心も容貌も名の通り美しいのね。

私とは正反対。

そんな気持を蘭に抱き少しイラついた。