蝶と蜘蛛1

「これを。」

わたしはそっと蘭に見せる。

「簪?」

「ええ。」

蘭の手に蝶の簪を握らせる。

「蝶は変化、成長の兆しを意味するの。もし、私よりも強くなったならこの蝶があなたを導くでしょう。」

「ああ。わかった。」

私は静かに扇を平げる。

そして術を唱える。

「絶対迎えにくるから!」

人間界に戻る刹那。

蘭は笑顔で叫んだ。

その声の余韻も消えないうちに蘭は消えた。