顔を洗い歯を磨いた。


冷たい湧水を何度も顔に叩きつけた。



僕も愛弓と同じように眠れなかったのだ。



次郎は、テントに入ると直ぐにスイッチが切れたように眠った。



次郎は、さすがだった。



思い詰めたような所も無く後は、やれる範囲の準備は、出来からどう転がっても対処してやると言う自信が感じられた。


次郎の凄味を改めて感じた。



僕は、焚き火のそばに戻るとコーヒーを飲みながらパンを食べた。



次郎と愛弓の談笑は、続いていたが僕には、内容が耳に入って来なかったしパンやコーヒーの味も良く分からなかった。


「純一、純一、純一!」



次郎の大きな声でハッとした。



次郎は、僕のジャンパーの襟を掴むと、そのまま無理矢理立たせ引きずるように僕を少し離れた所まで連れて行った。



「おい。純一どうした?
気持ちは、分かるぜ。
降りるか?」



僕は、首を振った。


次郎は、軽く手のひらで僕の顔を何度か笑いながらピタピタと叩いた。



「なぁ、後は、本能で動け。

もちろん俺が指示を出すが最後は、自分自身の本能だよ。

ヤバイと思えば引け。

行けると思えば行け。

それに、お前は、自分自身が思ってるよりも体力もついたし頭の回転も早い。

自信を持て。

俺が保証するよ。

お前くらいの若い人間の中じゃお前はこの国でこういう事に関しては、ナンバーワンだよ。

自信を持てよ!」



次郎は、僕の腹をかなり強く殴って来た。