「そんなにムキになるなよ。俺は、お前が心配なんだよ。」


「ありがとな。だけど、これは、譲れないな。


なぁ磯崎の親父死ぬ時に、あ~俺は、あれもやりゃ良かったこれもやりゃ良かったって嫌だろ。


あんただって婆さんにもっと優しくして酒を控え目にしろよ。


それと間違ってもいざここが争いになったら来るなよな。」


「どうも決心固そうだな。

次郎死ぬなよな。」


「ちょっと待ってくれよ。帰るんだろ。」



次郎は、そう言うと洞窟からビニール袋いっぱいの栗を持って来た。



「島で採れたんだよ。

もう会わないかも知れないから餞別だよ。」



「馬鹿野郎、会わないとか言うなよ。有り難く貰って行くよ。」



磯崎は、次郎の顔をジッと見たあと踵を返して漁船の方に歩いて行った。


次郎は、下を向いたまま動かなかった。

磯崎を乗せた河田の漁船は、帰って行った。



「まぁ色々仕方ないな。」



次郎は、ポツリとつぶやいた。