「ヒガキさんっ」


恵理夜は、プールを取り囲む祖父の部下たちの間を突き抜けるように走り抜けた。


「お嬢、なんでこんなところに……」

「おい、春樹はどうした」


部下たちが口々にいい、恵理夜を捕らえようとするが恵理夜は小さな身体の瞬発力を生かしてあっという間にプールサイドにまでたどり着いた。


「悪ぃな恵理夜、お前の水着は持ってきてねぇんだ。部屋に戻ってくれるか」


プールサイドの椅子に腰をかけた祖父は、何も起こっていないような涼しい顔でそう告げた。

プールの中では、ヒガキが必死にもがいて上がろうとしているのに、だ。