つむじ風。


桜が舞い散る夜。
ツヨシさんが俺に言った。

「次のリーダー、
おまえにやってもらいたい」

耳を疑った。

「もうすぐ俺はハタチになるし。
長いことやっちまったなぁ、暴走族。
高齢化社会の波が押し寄せてるぞ、ここにも。
ここは居心地がよかった…
だから今までズルズルきちまった。
でも、もう潮時だと思ってさ」

「そのことと、俺をリーダーにするというのは別です」

「なんでだよ?」

「俺はここに入って日も浅いですし…
他にも適任者はいます」

「大丈夫だって。
みんなおまえが好きだ。
無口で律儀で、仲間思いで…
文句を言うやつは一人もいねぇよ。
俺がみんなに了承を得た」

「でも…」

無理だ。
俺なんかにまとめられるわけがない。

「やってくれよ。
おまえにしか任せられないんだって。
俺にしたら、家族みたいなもんなんだからさ。
ま、ポリに追われるロクな家族じゃないけどよ」

ツヨシさんは伸びを一つした。
まるで重責から解放されて楽になった、
とでも言うように…

家族…

そう言われて、置き去りにした
兄貴とおふくろを久しぶりに思った。

元気か…?

なんて今さら俺が心配する資格なんてないよな。

捨てたのも同然だもんな。

桜の花びらが降り止むことなく、
俺の足元に重なっていった。