奥州の山賊






ひすいは政宗の部屋に入った。




障子をかたっと閉めるとその音が闇の中に吸い込まれていくようであった。




暗闇の中、寝床にいるのは微かな月明かりが照らしている政宗の身体だった。



ひすいは枕元にそっと座る。




今の政宗は先程の小十郎が言ったように非常に安定していた。



息遣いも乱れることなく定期的に続いていた。





強いて言うなら、この容貌だろう。




政宗と初めて出会ったあの日になびいていた結んだ髪は解かれ、それが横へと広がっていた。


また、月のせいだろうか、照らされた肌は綺麗で誰もを魅了する端麗な顔の持ち主なのだと思いしらされる。




ひすいはその頬に思わず触れてみたくなってしまった。




それに触れた瞬間、政宗がうめき声をあげたのでひすいは驚いて咄嗟にその手を離した。




政宗はひすいが触れていた頬を強張らせて、何かを繰り返し呟いていた。




「母、う…え…」



紡いでいた言葉はそれであった。



「政宗さん…?」




「待って……くだ、さ…れ……」



「待つ?」




政宗の口はそこで閉ざされてしまった。