書物は多いが、全て整理整頓されている。
ひすいが文字を読めないこともあるが、到底理解できないようなものばかりであった。
―――――だから五つの子供がこんなに知識を知っているのか…。
無知も恐ろしいが、時に知識がある人は余計なことまで知ろうとする。
もしかすると、この男児は己のもつ秘密を近いうちに知ってしまうかもしれない。
―――――否、すでに……?
さすれば、あの自分に向けてくれる笑顔は偽りということになる。
子供だからと否定する自分とこの子ならばと恐れなす自分とに板挟みされた気分だった。
「……父様は、ご無事でしょうか?」
小さな心細い声が聞こえた。
ひすいが振り返ると、梵天丸が自分の裾を握りしめて俯いていた。
「父様は、ずっと母様の名を呟いておりました。時に手を天へ伸ばし、母様に触れたいと願うようでした」
「政宗さんが……そんなことを」
「父様にとって、母様はとても大事な人なのです。どうか、意識が戻りましたらお顔を見せに……」
「―――――…ああ、そうするさ」
ひすいは心配する梵天丸を愛しく思いながら、政宗の安否を気遣うのであった。


