「母様。さあ、お早くこちらへ!」
梵天丸に促されてひすいは穴の中に迷わず入った。
すると、小十郎が胴と脚を直角に曲げて深く頭を下げた。
「先程の非礼、お詫び申し上げます…」
「あ、だ…大丈夫です!少し驚いたけど…。でも、何で…?」
小十郎は頭を上げて、申し訳なさそうに目を逸らした。
「……全ては政宗様と梵天丸様のためです」
それを聞いて梵天丸は俯く。
「貴女は山賊。そんな方が政宗様と通じていたなら、すぐに政宗様の信頼は薄らぐでしょう。それに、梵天丸様もこの米沢城にいることができなくなるかもしれない…」
「僕は、近くに父様か小十郎がいなければ、母様を他人として扱うように教わりました」
二人のひすいに対する謝罪の意が伝わってきた。
自分は見捨てられたのだとひとりそう思っていたひすいは二人の様子を見て胸を撫で下ろした。
「そうか、そうだったんだ…」
「しかし、おかしいですね…」
ひすいの安堵とは裏腹に、小十郎はまた顎に手を添えた。
「小十郎、僕もそう思います」
梵天丸も小十郎の裾を掴み、彼を見上げた。


