「………悪い、みんな」
ひすいは壺を胸にあててぎゅっと目を閉じた。
そして次に開眼するときにはひすいはすでに走っていた。
――――――
―――――――――
どうしたものか…。
米沢城に来てみたはいいものの、以前より遥かに警備が固くなっていた。
いつも登っていた壁の周りにも数人の見張りがいた。
ここで塀などを渡っていればまず目立ってしまうだろう。
考えている暇はない。
今は一刻の猶予もないのだ。
ここは真正面の正門から入るしかない。
事情を話し、小十郎を呼んでもらえば何とかなるだろう。
そう思って来たが……――――――
「小十郎様を呼べだと?何と図々しい女だ!見るからに怪しい格好のお前を会わせるわけにはいかん」
門番はそう言った。
確かに、言われてみればそうである。
何を隠そう、彼女はれっきとした山賊なのだ。通してくれるはずもなかった。
「そこを、なんとか頼むよっ!政宗さんに薬を――――」
「薬だと?何を言うか、貴様!政宗様は今公務中だぞ!ご病気ではない!」
薬という言葉に過度に反応し、眉を釣り上げて門番は言い放った。
「なっ…!政宗さんは毒を盛られたんじゃ…」
「毒だと?ふざけるなっ!貴様、それは政宗様に対する愚弄であるぞ!牢屋にいれてやる」
そう言って数人の門番がひすいを囲んだ時…―――――
「…………ひすいさん?」
と後ろから声をかけられた。


