「でもよぉ…」



また別の男が首をかしげた。



「姉貴だって年頃の女だぜ?しかも美人!そんな姉貴なら男の一人や二人、侍らせていてもおかしくはないよな?」




「あの人はそんなことはもうしないさ」





男の言葉にそう答えたのは豆吉であった。



すでにもう群の最後尾さえも見えなくなってしまった道を豆吉はまだ眺めていた。




「姉貴は、大将からそういうことをする必要はないと言われてから―――――」



「とか、何とか言いながらぁ〜!」



「なっ!」




豆吉が深刻に語っているのを遮り、また一人の男が豆吉の首に腕を巻いて詰め寄ってきた。




「あんたぁ〜、何だかんだで姉貴ともうしたんだろ?」



「した、って何をだよ」



「おいおい、皆まで言わすな。姉貴の側近なら近くにいる分、誘惑も多いだろ?」




確かこいつは酒癖の悪い奴だったな、と豆吉は冷静に彼を見ていた。



昨日はひすいの出発式もどきの酒宴を開いていた。


そして一際飲んでいたのがこの豆吉に絡んでいる男だった。



この男は特有で、酔いが回るのが遅い。また、その分覚めるのも遅いのだ。



まだこの男は酒宴状態なのであろう。