それから穏やかな日々が数日続いた。



あれ以降、<獅子>が襲撃してくることも無かった。


ひすいはこの平和すぎる日々を不思議に思ってある程度の警戒はしていたが、何より梵天丸に会いにいける日が多くなるのは嬉しかった。




しかし、そうは言っても彼女は山賊の立派な頭である。



資金繰りのために村を襲わなければならない。



あの城下町は大きすぎて襲うのは困難だが、他の村はというと、政宗の手が入っている村には何だか申し訳なさが芽生えてどうも襲いづらい。



そこでより北に下り、小さな集落を襲撃することにした。



そこに行くのには三日はかかる。


<鷹>が留守の間に他の山賊から襲われない保障はどこにもないので、ひすいは戦力を二分割することを提案する。



襲撃隊はひすいが率いて、守備隊には豆吉を置くことにした。





―――――出発当日




「姉貴、気をつけてな…」



豆吉の心許ない声に便乗して、後方にいる仲間たちが声をあげた。



「姉貴ぃ〜、俺も姉貴の隣で頑張りたかったっす!」



「ここで守備なんて不服だけど、姉貴の言われた通りに<鷹>を守ってみせやっせ!」



「姉貴ーー!大好きだぁ!」