「何だ。騒々しいぞ、小十郎」
小十郎は政宗が言葉をかけてきたことに内心安堵しながら返答した。
「はい、申し訳ございません。恐れながら、先程荒げた声を聞きまして、もしや刺客ではと疑い政宗様を訪れた次第でございます」
方膝を立てたまま頭を深く下げた小十郎に、鼻で笑う政宗の声が聞こえた。
「刺客だと?笑わせおって……。そんな輩はお前に頼まずとも、俺自身が斬っておるわ」
「……そうでございました」
確かに、城主の御身を案じて来てみたが、そもそも小十郎の主君は剣に優れていた。
余程の腕の立つ者でなければ彼の首は取れないだろう。
しかしそのことでは解決したが、小十郎はもうひとつ疑うべきことがあった。
「問題はない。お前もさっさと寝ろ、小十郎」
いっこうに帰らない小十郎を不審に思った政宗は追い払うような口調で言う。
すると、俯きざまに小十郎が小さく呟いた。
「政宗様、最近は城下には赴いてはいないようですね…」
突拍子にそう言われたので、政宗は怪訝そうに小十郎を見た。
「何が言いたい?…悪いが、説教は昼間のうちに済ませてほしいものだな。そもそも、ここ最近は政(まつりごと)と梵天丸の世話でそれどころではなかったろう」
「しかしながら、私はこの部屋に女人(にょにん)がいないか心配でございます」
小十郎はかつてのように女を侍らせているのではないかと疑っているのだ。


