「馬鹿か、お前は。それを自己満足だと述べているのだ。源九郎が仇討ちを望んでいると思うか?」
「知らねぇよ、そんなこと…!」
ひすいはさらにきつく胸ぐらを掴む。
「あんたに…、政宗さんに俺の気持ちなんかわかってたまるかよっ!」
「ああ…」
なげやりなひすいの言葉に政宗は小さく頷いた。
そして、ひすいの体はまたも人の温もりに包まれた。
「知らないさ、俺が知るわけなかろう?………たがな、お前も俺の気持ちを知らないだろ?」
「政宗さんの……気持ち?」
ひすいはさして抵抗もせず、ただ政宗の胸の中で呟いた。
「仇討ちなぞ、人の心を荒ませるだけだ。俺は、お前のその姿は見たくない」
政宗は一度強く抱きしめてからひすいを離した。
「行け。<鷹>を守るのに人殺しは必要ない。お前たちを脅かす者がいれば、この伊達政宗の名にかけて俺がお前を守りぬいてやる」
「政宗さん…――――」
ひすいがその名を呼ぶと、政宗はふっと笑った。
「案ずるな、これでも俺は奥州を平定した身。俺に二言はない」
「…………」
ひすいはその言葉を背に、政宗の自室を後にした。


