そういえば先程顔を覆うついでに頬をかきむしってしまっていた。
きっとそれで源九郎の血がついてしまったのだろう。
自分の手のひらにもそれはまんべんなく付着していて、ひすいはそれを茫然と見ていた。
過った思いはただひとつ…―――――
「憎い」
「え、」
「源九郎を殺した奴が憎いっ…!あたいが―――――…俺が、仇を必ずとってやるっ!」
「あんた…―――――」
手を伸ばしてくる豆吉をひすいはせいした。
「<鷹>の頭は俺が継ぐ。俺が、次期頭領さ」
「…………」
豆吉は何も言えなかった。
たった今、彼女の一人称があたいから俺になった。
それは彼女にとってのけじめなのかもしれない。
しかし、それは女を捨てたことになるに等しい。
源九郎に憧れを抱いていた彼女であるので、それはいとも簡単に為せたのだろう。
だが今後、彼女に本気で想う人が現れたら…?
より葛藤するにちがいない。
それが自分であればと密かに想いを馳せる豆吉だったのだった。


