「なんで、って……。理由はあんたの本当の笑顔が見たいから。――――男なんて、こんなもんだよ」




男はからからと笑う。




そうだろうか?


少なくともひすいが今まで会ってきた男たちは違った。



全て自分の欲もしくは利のためにひすいに接してきていた。




あまりにも対称的なこの男にひすいは不信感を抱く。


しかし、反対にこの男なら…――と期待してしまっている自分もいる。




ひすいが自分の心と葛藤していると、まあともかく、と男が呟いた。




「おいでよ。悪いようにはしねぇからさ。――――あ、俺は豆吉」



自己紹介と共に差し出された手をじっと眺める。




あまりに見つめすぎて、豆吉と名乗った男は片一方の手で頬をかいた。




「あ……、いやならいいんだ。ただ、あんたを大将に見せたくて…」



「金は、くれるのかい?」




無粋な言葉だと思ったが、案の定、豆吉は残念そうに目を閉じてため息をついた。




「やめろよ。世の中、全てが金じゃないんだ。うちの大将はそれをよく知っている。………だから、来てほしい」



「………」



「あんたを、その底から救いたいんだ」




向けられた微笑みをひすいは直視出来なかった。



目を背けていると、豆吉の気配が遠退いていることに気付き、本当についていこうか迷ったが、足が勝手に動いた。




否、ひすいは自分を変えたかったのかもしれない――――――