「なんでもするよ…。なんでも言うこと聞くよ…。だから、金をくれ」
「……なんでもって、何だよ」
「あたいの身体を自由に使っていいよ……」
「あんた…―――――」
男はそう呟くと、ひすいの顔を覗き込んだ。
「笑ってみなよ」
唐突に言われてひすいは困惑したが、それでも笑顔をつくるように努めた。
その様子をじっと見て、男はそのままひすいを強く抱きしめた。
「あんた、やっぱり哀しく笑うんだな…」
―――――初めてだった。
こんなにも優しい温もりを感じたことはない。
何故ここまでしてくれるのかはわからないが、それがひすいの心を満たした。
ひすいの瞳からひとつ、頬をつたって涙が流れた。
「あんた、俺についてこいよ。大将なら、なんとかしてくれるからさ」
「なんで…――――」
理由がわからない。
哀しく笑っただけで、何故助けてくれるのだろうか。
勝手に抱いて、勝手に口付けを落とし、勝手に金を払い、勝手に去っていけばいいだけの話だ。
そんなにも簡単なことを、この男がわからないはずがない。