「されたのだな?」
政宗は念押しにもう一度ひすいに言うが、当人はただ黙ったままだった。
痺れを切らした政宗は言う。
「―――時に沈黙とは、肯定と捉えることがある。お前のそれは、肯定として受け取るぞ」
ひすいは奥歯を噛みしめた。
「………源九郎が残した<鷹>を、俺は守りたいだけなんだよ。誰にも……、あいつにも渡したくないんだよ」
微かな震える声が政宗の自室に響く。
「―――――源九郎か……、懐かしい名だな。今はどうしておるのだ?」
「死んだよ…。何者かに殺されたんだ。なんだよ、あんた源九郎を知ってるのか?」
「ああ、源九郎は俺の奥州平定を助けてくれた唯一の山賊よ」
懐かしそうに遠くを見て微笑んでいる限り、これは真実なのだろう。
「奥州平定を……」
「そうよ。源九郎はよく戦ってくれたものだ。今一度、奴の槍捌きが見たかったが……」
そんなことを源九郎はひすいには一言も言ってはいなかった。
ただ政宗は厄介な男だと耳にたこができてしまうくらい呟いていた。
当時さほど興味もなく、聞き流していたひすいが覚えていたのだから相当言っていたに違いない。