悠と名乗った男の気配が完全に消えた後、また違う足跡がこちらに向かっているのがわかった。
ひすいはまだ立ち上がれず、その音のする方向を髪の毛が垂れた隙間から覗いていた。
「姉貴っ?!」
豆吉ではないが、別の仲間が来てくれたみたいだ。
「姉貴、どうしたんですかい?!」
「お、俺はいいから……あいつ、を―――――」
震えた指先で倒れている男を指差した。
仲間の男は彼に向かっていったが、その数歩前で立ち止まって首を振った。
「こいつは…、もう――――――!」
―――――死んでいる。
最後まで言わなくとも、なんとなくわかっていたことだった。
もし、あの男が来なければこの尊い命は救われたはずだったのに。
悔しさが唇を噛み締めた。
「それよりも姉貴、姉貴は平気なんですかい?」
仲間はひすいに近寄って座り、彼女の外傷を調べた。
「―――――ああ。俺より豆吉が心配―――――」
「あ、姉貴…――――――」
ひすいは言葉を遮られたことに、何故か嫌な予感がした。


