「いつかは父様のような武人になりとうございます」
「俺の…―――――」
本音を言ったつもりなのに、政宗は複雑そうな顔で梵天丸を眺めていた。
「…………父様、何か?」
そう尋ねると、我に帰ったように政宗は驚き、何でもない、とだけ呟いてその場をあとにした。
不思議がって梵天丸は小十郎を見ると、彼は目も合わせずにただ深々と礼をしてから政宗の後をついていった。
「…………」
梵天丸だけがその庭先で取り残された。
何度も言うようだが、彼は賢明であり、聡明でもある。
―――――あのお二方は、きっと何かを隠している。
先程の二人の行動はどうみても不自然である。
それに梵天丸は早速気付いてしまったのだ。
しかし、―――――
梵天丸は一面に広がる青空を見上げた。
――――今は、全てを知らない方が良い気がする。
何故だかは解せない。
だが、それらを知ってしまったとき、積み重ねてきたものが一気に総崩れしてしまいそうな気がしてならないのだ。
今の幸せが逃げてしまうならば、何もしないのが一番だ。
この空に誓うように、ぐっと拳に力をいれた。


