奥州の山賊






「あん…たの、…………せ……じゃ、ねぇ」





ひすいはそう言って政宗の頬を撫でるために弱々しく手を伸ばした。





まるで拭うように…────








「…………な、く……な………」








困ったものだ。




気付かぬうちに自分は泣いていたらしい。


それを虫の息の女に心配されて拭われるとは、一国の主失格だろうか。









「俺は、…………泣いてはおらん」





「………………ああ…」






これは涙ではない。



何物でもない、ただの雫だ。







それを愛しい人はきちんとわかっている。
肯定してくれたことが何よりの証拠だろう。







「俺は、お前をまた守れなかったのか…。お前には何もできないのか……」






布を纏った刺客といい、どうして傷つくのはいつも彼女なのだろうか。



そして、どうしていつも自分は何もできずにただ見守ることしかできないのだろう。









「─────…るを、そだて…………て、く…れた………じゃ、ね…か……」






子供をあやすように政宗の頭をひすいはぽんぽんと撫でる。




梵天丸を守ってくれたこと、育ててくれたことがひすいにとって恩だと思っているらしい。


だが、政宗には別の思いで梵天丸を育てていた。




「それは…、お前との縁(えにし)を断ちたくなかったからだ。あの男子(おのこ)をみていれば、必ずお前は男子に─────俺に会いにくると思ったからな」