こんなときでも思い浮かぶのは政宗のことばかりだ。
「ま……………むね、さ……」
ひすいは地に沿うように手を伸ばし、愛しい男の名を呼ぶ。
最期だとわかっている。
どれほど治癒できたとしても、きっとこの傷は血が止まらないだろう。
あの時─────どうしても、どうしても止血したかった源九郎の時のように、全身の血液が流れ出るだろう。
だから彼が恋しいのだ。
神仏などを信じたことはないが、今はどうか政宗と逢わせてくれと神頼みをしたい。
そう願って、瞼の重みが一層重くなったとき────
「ひすいっ─────!」
馬の蹄(ひづめ)の音と共に声が聞こえてくる。
それは愛しい彼の声だった。
彼が倒れている自分に気付きますように…
逢いたい気持ちが届くように、心の中で呼ぶ。
「ひすい!どこだ!」
もう一度、彼の声がした。
蹄の音が確実に近づいてくるのがわかる。
「ひすい……っ!」
地に降り立ち、足音がすぐそばまで来た。
──────…あぁ、逢えたのだ。
政宗の顔を最期に、と重くて開きそうにない瞼を薄ら開ける。


